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谷田幸次インタビュー (第2回):水銀のこと

現代では水銀はどういった使われ方をしているのでしょうか ?

現在でも世界の一部の金採掘場では、金が含まれた砂金と水銀を鍋に入れてアマルガム (合金) を作り出し、それをバーナーなどで加熱して水銀を蒸発させ、金だけを取り出すという採掘方法がよく行われています。

そういった採掘方法を繰り返しているので、蒸発した水銀は大気中にガスとして拡散している状態です。

そういう地域の大気中の水銀量を計測すると、我々が生活しているところに比べると圧倒的に水銀の数値が高いのです。

それは無機水銀だから、今のところは住民にさほど被害は出ていませんが、それが生態系を介して川に入り、そしてそれが魚に入って有機化し、その魚を人が食べるということで水俣病が発生してしまうという連鎖が起きてしまいます。

そういった国では、政府としても何とかしたいと思っていても、金採掘場は生業として、働く人としては生活が掛かっている死活問題として、危険ではあるけれど止めることは出来ないというジレンマがあります。

簡単なことではありませんが、水銀を使わない金採掘方法を考案して、それをそういった地域に指導していく必要があるのだと思います。

大気中に放たれた水銀は地球規模で拡散してしまうので、水俣条約でも水銀を使った金採掘は問題として挙げられています。

水銀を使った金採掘

技術者として他にも興味深いものは有ったでしょうけど、水銀だけでここまで来たのは何故ですか ?

私は物理系の出身で、決して優秀な学生ではありませんでした。

当然水銀のことは知っていましたが、殊更水銀に興味があった訳ではありません。

会社に入って、配属された部署が水銀計の開発をやり始めていたので、業務として水銀と関わるようになり、現在に至っているという感じです。

だから最初から水銀に関わりたいと思っていた訳ではありませんし、学生の時に出来る実験なんて限られたものですから、何を専攻して、どんな勉強をしていたかといったバックグラウンドはそんなに重要ではないと思っています。

うちの会社に居る若手社員の中には、学生時代に研究室に日本インスツルメンツの水銀測定装置があり、それを使って色んな環境測定をしているうちに水銀に興味を持ったので、引き続き水銀に携わって行きたいと思い、うちの会社に入社してきた人もいます。

環境計量士, 作業環境測定士のことを教えてください。

将来の業務のひとつに分析業務などの証明事業をすることも視野に入れていたので、環境計量士の資格を取得しました。

分析依頼が来た時に、公式の測定結果として提出する計量証明にはこの資格が必要となるので、出張の合間などに少しずつ勉強したりして資格をとりました。

また作業環境測定は、測定士の測定デザインの基に測定をしなければなりませんので、作業環境測定士の資格も取りました。

これらもまた優秀な成績で取得出来た訳ではなく、実習の講師には「筆記試験に合格したからといって、堂々と胸を張れるような成績ではなかったぞ」と釘を刺されてしまいました。

日常生活で水銀を意識することはありますか ?

あります。

テレビや紙面で『水』と『銀』という文字を見かけると、つい注目してしまいます。

これはある意味ひとつの職業病かもしれません。

私が毎日業務で水銀を扱っているものですから、自分の毛髪をたまに測定して濃度は把握していました。

ある日、自分の子供の髪の毛の水銀量を測定したところ、私の髪の毛とほぼ同じぐらいの数値でした。

そのことから、私の髪の毛の水銀は食生活や遺伝的なものから来ている数値であり、水銀を扱う業務による影響は出ていないと分かって安心しました。

髪の毛の水銀量測定は簡単に出来るので、海外に測定装置の納入に行った時などに、製品の説明や測定方法を説明した後で「髪の毛の水銀量を測定してみませんか ?」と持ちかけることがよくあります。

最初はお客さんも恐る恐る測定して、測定結果の数値を見ると不安な顔をされます。

しかし、最後に私が自分の髪の毛で測定すると、それらの人よりもずっと高い値が検出され、それでも私が元気で健康なので、ホッと安心されます。

私は、日本人はマグロやカツオなど食物連鎖の高い位置の魚をよく食べるので、海外の人よりも水銀量が高いことを知っているから、そういうことをするのですけどね。

カツオと言えば、カツオのたたきと一緒にニンニクを添えるでしょ ?

ニンニクにはセレンという成分が含まれていて、セレンは体内で水銀を捕まえて排出するという解毒効果があるんです。

それを生活の知恵としてカツオと共にニンニクを食べていたのだとしたら、昔の人は賢いなと思ったことがありました。

2013年に水俣条約が可決されましたが、それによって変化はありましたか ?

まだそれほど変わったところは顕著に出ていませんが、問い合わせは確実に増えました。

また色んなところで水銀測定装置専業メーカーである我々が話をする機会も増えました。

以前は「NIC ? Who ?」という状態だった海外でも “日本インスツルメンツ株式会社” という名前が少しずつ認知されつつあるのかな、という感じも受けています。

一般の人は水俣条約をご存じない人の方が大多数でしょうけど、世界規模で水銀を減らして行こうというのは大変意味のある良い取り組みなので、皆さんにとって安全でよりよい方向に向かっていると思っています。

[第3回につづく]


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