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第1回インタビュー:装置のこと

谷田幸次インタビュー (第1回):装置のこと

水銀測定装置を作り始めた頃はどんな様子でしたか ?

創業時は会社の規模も小さくて、私も若かったので何ごとにもハングリーでした。
ハングリーになるとお客さんのニーズにとても敏感になりました。

小規模会社ゆえに小回りが効きますし、タイムリーにニーズに応じた機器の開発, 製造をすることが出来ました。
そんなこともあって今まで水銀測定装置だけで何とか生き残ることが出来たと思っています。

水銀分析の応用としては勿論環境分析が一番に挙げられますが、それだけでは弊社は存続しえなかったと思っています。

環境分析はその性格上環境基準をクリア出来れば、より安価な装置を求められ、あとは厳しい価格競争を強いられます。

日本インスツルメンツ株式会社のもうひとつの柱として品質管理を目的とした装置群を提供してまいりました。そこでは価格ではなく、性能が一番のプライオリティです。

より精確な水銀測定値を知りたいというお客さんに弊社製品を選んで貰ったということも、水銀という一元素だけで、ここまで続けてこられた要因でもあると思っています。

日本インスツルメンツ株式会社の水銀測定装置は他メーカーと比較してどんな特徴がありますか ?

水銀の測定原理は非常に簡単, シンプルなもので、どの部分もよく知られている方法だから装置は容易に製作が可能です。

そのままでは見た目のデザインが違うだけで、どこも同じような中身の測定装置になってしまいます。

測定原理が簡単, シンプルなので、言わば誰にでも測定装置を製作することが出来るのですが、日本インスツルメンツ株式会社ではその装置に今まで蓄積して来たノウハウの歴史を加えます。
私はこれを装置に “魂を入れる” と言っています。

これは簡単なことではありませんが、それが出来たからこそ日本インスツルメンツの製品はここまでラインアップを揃えることが出来たのではないかと思っています。

これらのノウハウは私たちの会社の財産であり、これが水銀測定装置専業メーカーとして長年やってこられた日本インスツルメンツ製品の最大の特長だと思います。

また、このノウハウの継承が私の仕事でもあるので、後継者や若い世代にそれをきちんと伝えていきたいと考えています。

水銀測定装置に関する印象深いエピソードがあれば教えてください。

ある時、オランダのロッテルダムにある大手石油会社の中央研究所から突然メールが来ました。

インターネットで弊社のことを見つけたようで「ナフサ (粗製ガソリン, 直留ガソリン) の中の水銀を測定出来るか?」とのことでした。

「はい、測定出来ます」と返事をして、何度かのやり取りの後、測定サンプルを送って来たので、担当の私がそれを測定して測定結果を送り返したんです。

当然向こうは大企業なので世界各国にネットワークを持っていて、他社にも同様の依頼をしていました。

恐らく私たちの結果が一番よかったのでしょうが、当時は「NIC ? Who ?」という状態でしたから「にわかには信じがたいので、測定装置を持って来て目の前で測定して、この測定結果が実現出来るのなら製品を導入するから」という連絡がありました。

不安を抱えながらも装置を持ってロッテルダムまで行きました。
向こうの研究所に行き、技術者と打ち合わせをしたところ、それはとても微妙な測定内容でした。

打ち合わせ内容に沿った測定作業をして滞在3日目にそれのレポートを提出し、翌日レポートを元に技術者たちとディスカッションをしました。

その結果、技術者のチーフに「パーフェクトだ!今日をもってこの水銀測定装置を当社へ “納入” ということに切り替えてくれ!」と言われた時は、非常に嬉しくて、その日の夜のワインは格別の味でした。(笑)

また、こういうこともありました。
どこでうちの情報を聞いて来たのか、アメリカのUOPという大きい会社から「油の中の含有水銀量の規格を新たに作りたい」という話が来たこともありました。

向こうの技術者とやり取りをして、サンプルの測定結果を現地に送ったり、連絡を取り合ったりした結果、その規格には『日本インスツルメンツの○○○という水銀測定装置を用いること』と記載されるまでに至りました。

これらも環境分析だけではなく、品質管理にも使えるレベルの水銀測定装置を開発, 製造してきたからだと思っています。

かなり昔の話になりますが、海外の金採掘場の上空で大気中に水銀がどの程度含まれているかの測定をしたことがありました。

横方向ではなく縦方向に移動して、例えば『地上200メートルまでの20メートル間隔での水銀分布測定』をするわけです。

今だったらドローンなどで割と簡単に実現出来るでしょうけど、当時はそういうものは無かったので、浮力計算をした大きな飛行船のような形の気球を特注で作って貰って、それで水銀測定装置を吊り上げて測定しました。

現地に行ってから失敗する訳にはいかないので、気球を飛ばす予行練習として、会社の近所の小学校の校庭を使わせて貰いました。
何本ものボンベを使って気球にヘリウムガスを充填して浮かせるテストをしたんです。

かなり大きな気球なので何事が始まるのかと近所の子供や大人が随分と集まって来たのが印象に残っています。

予行練習をしたお陰で現地でも大きな問題もなく気球を飛ばして測定することが出来ました。

この世に水銀測定装置が無かったとしたら現在の私たちの生活はどうなっていたでしょうか ?

難しい問いかけですねぇ…。
答えにはなりませんが、早いか遅いかの違いで、必要とされるものだから必ず誰かが作って、世に出て来たと思います。

今後も水銀測定装置に関わっていく部下や後輩に対して気に掛けていることはありますか ?

避けて通ることが出来ないものとして『英語』と『統計学』の勉強、そして『問題を先送りしない』ということを言っています。

言語は伝達の手段なので通訳を使って堂々と海外で活躍する人もいるでしょうが、残念ながら (?) 英語が国際語になっている以上話せないより話せる方が絶対に有利なので、勉強してくださいとお願いしています。

統計学に関しては、今後全てにおいてこれが重要になってくると思っています。

「こんな感じだから良好そうである」「あんまり良くなさそうだ」という客観性を欠いたものでは説得力がありません。

「これこれの統計結果から見ると優位さがある/ない」という時代になっているので、統計学を知らないとお客さんにデータを見せてディスカッションすることが出来ませんから、必ず統計学は勉強しなさいと言っています。

また、私もそうだったのですが、人は問題にぶつかった時にはそれを避けて通るという安易な方向に行ってしまいがちですが、その時はそれで回避出来ても、やがてそれが二倍, 三倍になって待ち構えています。

この仕事をしていると「これはあの時に出て来た問題が原因だな!」ということがよくあります。

そういった私の経験から何か問題が出て来た時には “先送りにしない” ということを私自身の反省も踏まえて、よく言っています。

[第2回につづく]


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